2008 Fiscal Year Annual Research Report
ボウル型分子スマネンを活用したカーボンナノチューブ骨格の合成研究
Project/Area Number |
20750033
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 Osaka University, 大学院・工学研究科, 助教 (20397615)
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Keywords | カーボンナノチューブ / πボウル / π共役 / スマネン |
Research Abstract |
カーボンナノチューブは炭素科学を支える鍵物質であるが、その有機合成は未だ達成されていない。さらに、その最短構造であるシクロフェナセン等についても、C_<60>の共役系を崩して単離された例を除き未だ合成されていない。このような筒状骨格合成には、「如何に共役したベンゼン環を湾曲させるか、そして筒状に閉環させるか」という課題の解決が必須である。申請者は湾曲したπ平面を有するπボウルに着眼し、これをビルディングブロックとして用いることにより、筒状骨格構築が可能になると考えた。本研究では、湾曲したπ共役系ビルディングブロックとしてスマネンを選択し、筒状骨格構造合成法の開発を目的とする。 まず、スマネンから湾曲π共役系構造を伸張させることを検討した。標的分子としてC_<42>H_<18>を設定し、合成に取り組んだ。スマネンを臭素で処理することにより芳香環部位をトリブロモ化した後、Pd(0)触媒存在下、鈴木・宮浦カップリング反応により、ベンズアルデヒド部位を3箇所導入した。スマネンをカリウムヘキサメチルジシラジドで処理することにより、対応するベンジルアニオンを発生させ、分子内1, 2付加・脱水芳香族化を経て、スマネンに縮環が3つ増えたC_<42>H_<18>を高収率で合成した。密度汎関数法を用いた分子軌道計算により得られた最適化構造から、スマネンよりも今回合成したC_<42>H_<18>の方がボウル構造が深く、π共役系の湾曲が大きいことが示された。ここで、得られた知見は筒状骨格合成に向けて、基礎的知見を与えるものと考えられる。
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Research Products
(10 results)