2008 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族ニトロ化合物を基本骨格とする新規ケージド化合物の開発とNO発生能の解明
Project/Area Number |
20750035
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
犬井 洋 Kitasato University, 理学部, 助教 (20348600)
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Keywords | 一酸化窒素 / 光化学 / 極低温マトリックス単離法 / NO発生剤 |
Research Abstract |
一酸化窒素(NO)が関与する生理機能や抗腫瘍活性をより詳細に研究するためには、時空間的に制御された発生を可能にする光NOドナーが有用である。本研究では、芳香環に対して大きなねじれを持って置換したニトロ基が光化学的にNOを放出することに着目し、熱的には極めて安定であるが、可視光照射により効率良くNOを発生し得る新しいタイプの光NO発生剤の構築を目的としている。今年度はニトロナフタレンをNO発生骨格とし、そこに水溶性や特定部位認識能の獲得を目的としてN-アセチルグルコサミンを連結した新規な分子を設計し、その光NO放出の能力とメカニズムの解明を目指した。 設計したニトロナフタレン-グルコサミン連結型NO発生剤(1)の合成は、2,6-ジメチルナフタレンの1位をニトロ化した後、6位のメチル基のみカルボン酸、更にカルボン酸塩化物へと導き、これをN-アセチルグルコサミンの一級ヒドロキシル基と縮合させることによって行うことができた。 この分子1の光化学を調べる前に、ニトロナフタレン骨格のみの極低温マトリックス中での光反応を行ったところ、亜硝酸エステル中間体(X)を経由して、NOとオキシラジカル(Y)に分解されることがわかった。また、"X"と"NO+Y"との問には新規な光化学的な平衡が存在することも明らかとなった。 続いて、分子1の水溶液中でのNO発生能を調べた。1の水溶液に光照射した後、NO_2^-の検出薬であるGriess試薬を用いて間接的にNOの発生収率を求めたところ約20%であった。また、1の水に対する溶解度(1.25mg-ml)は、N-アセチルグルコサミンを連結する前の83倍以上であることがわかった。すなわち十分な水溶性を有し、可視光でNO放出が可能な新規な分子を構築することができた。
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Research Products
(2 results)