2009 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族ニトロ化合物を基本骨格とする新規ケージド化合物の開発とNO発生能の解明
Project/Area Number |
20750035
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
犬井 洋 Kitasato University, 理学部, 助教 (20348600)
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Keywords | 一酸化窒素 / 光化学 / 極低温マトリックス単離法 / NO発生剤 |
Research Abstract |
一酸化窒素(NO)が関与する生理機能や抗腫瘍活性をより詳細に理解するためには、時間的、空間的に制御された発生を可能にする光NO発生剤が有用である。本年度は10-ニトロ-9-アントラセンカルボン酸(1)の光NO発生に関する機構と能力を各種分光法を用いて調べた後、水溶性と癌認識能の獲得を目的としてN-アセチルグルコサミン等の糖を連結したNO発生剤を設計し合成方法を検討した。 極低温マトリックス単離法により1の光反応を追跡し、理論計算により解析したところ、亜硝酸エステルを経由してオキシラジカルとNOを放出することが判った。また、室温溶液中の光反応をNMRにより調べたところ、1から生成したオキシラジカルは二量化によるビアントロン生成はせず、NOとの再結合後、脱炭酸することにより最終的にオキシム体を生成することも判明した。この反応の機構はNO捕捉剤であるTPPCo存在下での反応や溶液中の二酸化炭素の赤外検出に基づいて確認された。 このように、1は光化学的にNOを生成するが、環境によりその後の反応様式に大きな違いがあることが明確となった。更に、1と9-ニトロアントラセン(2)の分解速度をUVにより求め、比較したところ、カルボキシル基の導入により分解効率が2倍以上向上する等の知見も得られた。これは、電子吸引基であるカルボキシル基の影響で対面のニトロ基がアントラセン平面から大きくねじれることに起因する結果であると考えられる。糖連結分子の合成については、ヒドロキシルブチル基をスペーサーとして利用することにより、粗製ではあるが、グルコースを連結した新規なNO発生剤を合成することができた。
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Research Products
(3 results)