2010 Fiscal Year Annual Research Report
芳香族ニトロ化合物を基本骨格とする新規ケージド化合物の開発とNO発生能の解明
Project/Area Number |
20750035
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
犬井 洋 北里大学, 理学部, 助教 (20348600)
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Keywords | 一酸化窒素 / 光化学 / 極低温マトリックス単離法 / NO発生剤 |
Research Abstract |
一酸化窒素(NO)の生物活性をより詳細に知るためには、その発生時間や場所を容易に制御できる光NO発生剤の開発は重要である。本研究では、芳香族ニトロ化合物の光反応を利用したNO発生剤の創生を目指している。本年度は、10-ニトロ-9-アントラセンカルボン酸(1a)とその誘導体を合成し、その光反応に関する基本的且つ重要な情報の収集を行った。誘導体としては、癌認識能の獲得や細胞内滞留性の向上を目的として、1aのカルボキシル基にエステル結合でN-アセチルグルコサミン類似糖(1b)やアセトキシメチル基(1c)を連結させた分子を設計し合成を行った。 1a-cおよび9-ニトロアントラセン(2)対し室温溶液中で光照射し、NMRにより生成物分布を調べた。その結果、2は主にビアントロンを生成するのに対し、1aと1cではそれぞれオキシム体とニトロソ体を与えることが判明した。1bでは複雑なスペクトルを与え、生成物の構造を決定することは出来ていない。上記ニトロソ体は、発生したNOとオキシラジカルの再結合により生成するものであり、オキシム体は再結合後の脱炭酸により生じたものと推測される。また、積算光量計とグリース試薬を用いて基質分解の絶対量子収率(φ)や発生したNOの収率(Y_<NO>)を求めたところ、9位に電子吸引基を有する1a-cでは2に比べφが大幅に向上したが、Y_<NO>は低下することが判明した。φの増大は、電子吸引基の存在により対面ニトロ基のねじれを誘発した結果、NO発生の中間体であるニトリトへの転位が促進されたことによるものであると考えられる。Y_<NO>は、オキシラジカルの二量化が立体障害により抑制され、その結果としてNOを捕捉し易くなったと考えられる1a-cにおいて低下したものと結論された。
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Research Products
(4 results)