Research Abstract |
16電子ビス(シリル)ルテニウム錯体Ru(xantsil)(CO)(PCy_3)[A,xantsil=(9,9-dimethylxanthene-4,5-diyl)bis(dimethylsilyl)]は,新しいヒドロシリル化反応(フェニル基置換アルキンと第三級シランとの反応により芳香環がシリル化された(E)-アルケンBが選択的に生成する反応)の触媒となる。本年度は,より高活性な触媒の開発を目指し,Aのホスフィン配位子をN-ヘテロ環カルベン配位子に変えた類縁体を合成し,得られた錯体の触媒活性について明らかにした。 ホスフィン錯体Aと同様の合成手法を適用し,ビス(シリル)配位子xantsilを持つトルエン錯体Ru(xantsil)(CO)(η^6-toluene)とN-ヘテロ環カルベン(IPr,IMes)との配位子置換反応を行なうことで,カルベン配位子の窒素上の置換基が異なる二種類の16電子ビス(シリル)ルテニウム錯体Ru(xantsil)(CO)(L)(C,L=IPr;D,L=IMes)を合成した。各種スペクトルおよびX線結晶構造解析により,C,DはxantsilがSi,Si,O三座で配位した歪んだ三方両錐型構造を持つことがわかった。 次に,C,Dを触媒としたジフェニルアセチレンとエチルジメチルシランとのヒドロシリル化反応を行なったところ,(E)-アルケンBの生成だけでなく,アルキンのC≡C三重結合がヒドロシリル化されたシリルアルケン((E)-体(E)-Eおよび(Z)-体(Z)-Eの混合物)の生成が競争的に起こった。また,触媒の種類(CおよびD)の違いにより,B,(E)-E,(Z)-Eの生成比が変化した。したがって,本触媒反応が,配位子の種類(ホスフィンあるいはN-ヘテロ環カルベン)の違いやカルベン配位子の立体効果の違いにより大きな影響を受けることがわかった。
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