2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20750041
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
二瓶 雅之 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 講師 (00359572)
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Keywords | 電子移動 / 外場応答 / 多重安定性 / 物性変換 |
Research Abstract |
異なる酸化数をもつ金属イオンからなる混合原子価錯体や異種金属イオンからなるヘテロメタル多核錯体では、金属イオン間における電子の非局在化による多段階酸化還元挙動や、強磁性もしくはフェリ磁性的なスピン配列による超常磁性など、多様な物性を示す。本研究では、へテロ金属イオン間のフロンティアオービタルを精密に設計することにより外場誘起電子移動系を構築し、それに伴う大きな構造・電子状態変化を利用した多重安定性の創出、および物性変換を行うことを目的とした。 その結果、鉄イオンとコバルトイオンからなる環状4核錯体[Fe^<III>_2Co^<II>_2(CN)_6(L1)_2(L2)_4](L1 : 三座配位子、L2 : 二座配位子)が熱に依存して分子内電子移動を示し、高温相([Fe^<III>_LS(S=1/2)Co^<II>_HS(S=3/2)])と低温相([Fe^<II>_LS(S=0)Co^<III>_LS(S=0)])の二つの相をとり得ることを明らかにした。さらに、異種金属イオンのフロンティアオービタルを配位子の化学修飾により制御することで、高温相と低温相のエネルギー差をコントロールすることが可能なことを見出した。すなわち、配位子の電子供与性と電子吸引性を組み合わせることで鉄イオンとコバルトイオンの酸化還元電位を変化させることで、高温相のみを示す錯体、低温相のみを示す錯体、および熱誘起分子内電子移動を示す錯体を選択的に合成することに成功した。さらに、得られた四核錯体は低温における光照射により光誘起分子内電子移動を示し、安定な準安定状態を生成することを明らかにした。
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