2009 Fiscal Year Annual Research Report
環状多核金属錯体による孤立した水クラスター「ナノ水滴」の構築と精密機能化
Project/Area Number |
20750043
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田代 省平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助教 (80420230)
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Keywords | 水クラスター / 金属錯体 / 分子認識 / ナノ科学 / 自己集合 |
Research Abstract |
水のクラスターは、DNAやタンパク質などの生体高分子表面に存在することで、高次生体構造の維持や生命活動に必須な種々の機能発現を担うだけでなく、水分子がクラスター化することによって特異な物性を示すことがよく知られており、興味深い研究対象として近年盛んに研究が行われている。そこで本研究では、新規にデザインした大環状多核金属錯体をプラットフォームとして、その内孔に水分子を集積化することにより、ナノ空間内で孤立した水クラスター「ナノ水滴」を創製することを目的とした。また水分子だけでなく、種々のイオンや分子を一義的に集積化することにより、特異な構造や性質を示す新規クラスター構造の精密合成を目指した。クラスター化の基本的なプラットフォームとして、様々な形状や特性を有する数種類の大環状多座配位子を合成した。例えば、剛直な菱形大環状配位子と様々な金属イオンを錯体形成させることで、同種・異種金属イオンからなる多様なホモ・ヘテロ多核金属錯体群を高効率・高選択的に構築することに成功した。得られた多核金属錯体は、環内に配列した金属イオンを基点として、様々な陰イオンを環内孔に集積することができた。一方、新規に合成した十六員環型環状四座配位子では、環内に2つの銀イオンを共包接し、また結晶中では二核ユニットが一次元配列することにより、銀イオンの一次元精密集積を達成した。さらに、比較的柔軟な三角型環状配位子を用いた場合には、環内孔における金属イオンの集積化に伴い結晶化し、ナノメートルサイズのチャネル構造を有する多孔性単結晶材料が得られることを見出した。形成したナノチャネル内の分子認識ポケットを基点として、水分子や有機分子をチャネル内で精密に配列させることに成功した。
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