2009 Fiscal Year Annual Research Report
動的構造変換と電子移動特性の相関による新規応答性錯体の開発
Project/Area Number |
20750044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久米 晶子 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (30431894)
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Keywords | 銅錯体 / 反転異性 / 電子移動 / ビピリミジン / ピリミジン / 双安定性 / 分子アレイ |
Research Abstract |
本研究の目的は、配位子交換反応を反転メカニクスとして取り入れた刺激応答性金属錯体ネットワークの構築である。本年度はまず、このピリジルピリミジン銅錯体を分子パーツとする分子内電子移動系の組み立てを行った。ピリジルピリミジン配位子とフェロセニル基を連結した銅/フェロセン二中心系において、ピリミジン環の回転を活性化することで、銅中心にトラップされていた電子がフェロセニウム中心に移動する、分子内電子移動のシンクロ現象を明らかにした。また、銅錯体内に対称的に二つのフェロセニル基を置換した、3中心型レドックス分子アレイを構築した。この3中心系においては、ピリジミン環の回転をOFFした状態では対称な二つのフェロセンから1電子が抜ける電子交換可能なアレイの電子状態を形成するが、一旦昇温して電子移動をONにすると、電荷中心は銅中心に局在することがわかった。ささらに、新しい骨格として二つの回転基を持つビピリミジン配位子についてその回転運動を検討した。この配位子においては、2段階の環反転によってレドックス電位の変化幅が大きくなるだけではなく、その反転活性化エネルギーが各段階で異なるため、1つの環のみ動く温度領域と、二つとも動いていている温度領域が存在することが分かった。これらの結果は分子メカニクスを用いた手法による、極単純な錯体骨格が分子によって構築される回路中で、ディスクリートに分子の電子状態を変換することで機能できる可能性を提示していると考えている。
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