2010 Fiscal Year Annual Research Report
トリスピラゾリルボレート配位子を持つマンガンセミキノナト錯体の合成と性質の解明
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20750052
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
小松崎 秀人 茨城工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (00280347)
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Keywords | マンガン錯体 / セミキノナト / カテコラト |
Research Abstract |
本研究では、トリスピラゾリルボレート配位子を用いて、エクストラジオール型マンガンカテコールジオキシゲナーゼのMn-基質結合体(カテコール基質結合錯体)について、そのモデル錯体の合成と反応性について検討を行っている。本年度は、カテコール上の置換基を変化させた各錯体と酸素分子との反応の検討、分光学データ、電気化学的データの獲得を行った。 まず、4位にClおよびN02基を導入した錯体の電子スペクトルを測定すると、無置換体、4-メチル体そしてジ-tert-ブチル体のMn(II)セミキノナト種とは異なり、Mn(III)種に類似したスペクトル形を示した。また、そのESR(77K)の結果もMn(III)種の生成を支持した。 5種のMn-カテコール結合錯体の電気化学的拳動について検討を加えた。カテコール上の置換基の電子供与性能が強い程、カテコール部位はセミキノン状態になり易いことが明らかになった。サイクリック・ボルタンメトリーにより各錯体のEpa値を調査した結果を示す(V vs.Ag/Ag+、電解質:0.1M-TBAP塩化メチレン溶液);ジ-tertブチル体(-0.62)、4-Me体(-0.39)、無置換体(-0.37)、4-Cl体(-0.27)、4-NO2体(1.21)。 4-クロロ体と酸素との反応は数日を要し、反応後のIRではC=0伸縮に帰属出来るピークが観測され、カテコール部位の酸化が進行したことが明らかになった。また、4-ニトロ体と酸素との反応の再現性を確認したが、反応はほとんど進行しないことが明らかになった。 以上の検討より、カテコール部位に電子供与性基を導入すると、カテコラト配位子はMn(III)との間で1電子移動を伴った原子価互変異性を起こし、Mn(II)セミキノナト状態へとなり易いことが分かった。またMN(II)セミキノナト種は酸素と容易に反応し、カテコール部の酸化(1,2-ベンゾキノンへの酸化、カテコール環の酸化的開裂)が進行することが明らかになった。その一方で、ニトロ基のような電子吸引性の強い基を導入した場合、原子価互変異性は起こりにくく、Mn(III)カテコラト状態を保持するため、酸素との反応は進行しづらいことが明らかになった。
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