Research Abstract |
我々の研究グループでは,理化学研究所加速器研究施設リニアック棟に既設の気体充填型反跳核分離装置(GARIS)を利用し,物理的に前段分離された超重元素の気相化学的性質を調べることを計画している.今年度は,^<248>Cm回転標的,ガスジェット搬送装置ならびに焦点面検出器などを開発し,それぞれ^<248>Cm(^<18>O,5n)^<261>Rfならびに^<248>Cm(^<22>Ne,5n)^<265>Sg反応によって生成する^<261>Rf(原子番号Z=104)と^<265>Sg(Z=106)を用いて,熱い核融合反応に対する本システムの性能評価を行った.GARISによって質量分離した生成核を化学実験室にガスジェット搬送し,回転式アルファ線連続測定装置を用いて計測したところ,^<261>Rfと^<265>Sgを極低バックグラウンド下で検出することに成功した.^<261>Rfについては,GARISの最適磁場(1.75Tm),GARISの輸送効率(7.8%)や化学実験室へのガスジェット搬送効率(52%)などを決定することができた.^<265>Sgは,未だにその壊変様式がよく分かっていない核種であったが,本研究によって,新たに14個の壊変鎖を観測することができ,^<265>Sgの壊変様式の解明に大きく貢献できた.一方,ビームが標的チェンバー内を通過する従来のガスジェット法では,ビーム強度の増大とともにガスジェット搬送効率が低下するという深刻な問題が生じていた.本システムでは,それぞれ最大5pμAならびに4pμAの大強度^<18>O,^<22>Neビームを用いて実験を行ったが,GARISによるビーム分離によって,50%を超える高いガスジェット搬送効率を達成することができた.以上の成果は,生成率が極めて小さくかつ短寿命の超重元素の気相化学研究において,(1)極低バックグラウンド下における気相化学実験,(2)ガスジェット搬送効率の増大ならびに安定化,(3)多彩な化学反応系の実現などの大きなブレイクスルーをもたらすことが期待される.さらに,今年度は,GARIS直結型のガスクロマトグラフ装置の設計,製作を行った.来年度より,超重元素の気相化学分離に向けてた性能試験を進めていく予定である.
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