Research Abstract |
近年,有害化学物質による環境汚染,食品中の残留農薬,新型インフルエンザなどの新興感染症の流行が社会問題になっている。これらの分析や検査において使用させる従来の分析装置は高価であるものが多く,測定に時間を要し,オンサイトで計測できるようなポータブルではない。そこで本研究では,現場で,誰もが,簡便,迅速かつ高感度に測定できる新しい分析システムの開発を目的として,コンパクトディスク(CD)型表面プラズモン共鳴(SPR)センサについて検討した。これは,CD上に,試薬と試料の液だめ及び分離・検出を行うマイクロチャネルを作製し,CDの回転による遠心力を利用して試薬と試料をマイクロチャネル内に導入し,試料中の各成分をマイクロチャネル内壁に固定した種々のレセプタータンパク質との相互作用により分離した後,SPR現象を利用して検出する,新規マイクロ化学分析システムを開発するものである。 本年度は昨年に引き続き,CD型マイクロチップとその回転装置を開発し,液だめからの溶液の流動と回転数の関係について,理論と実験の両面から検討した。その結果,溶液が液だめから流れ出す回転数は,液だめの位置,液量,密度,チャネルサイズ,表面張力などに依存することが明らかとなり,CD上の液だめ内の溶液を回転数を制御することにより順番にチャネルに送液することに成功した。一方,SPRセンサ光学系についてはグレーティング方式の光学系を検討した。スクロース濃度と共鳴波長の変化量をプロットした検量線は良好な直線関係を示し,本光学系によりSPR測定が可能なことが確かめられた。さらに,CD型SPRセンサによるイムノグロブリンAの測定にも成功した。 以上のように,本研究ではCD型SPRセンサの基盤となる要素技術を開発することができた。CD型SPRセンサはシステム全体の小型化が可能なので,オンサイトでの測定に極めて有用であると考えられる。
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