Research Abstract |
本年度は,触媒量の鉄塩とグリニャール試薬から調製した低原子価鉄試薬と官能性エンインを用いる触媒的メタル化環化反応の検討をおこない,以下の結果が得られた.具体的には,THF中触媒量のFeCl_2とエチル(E)-5,5-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-8-(N,N-ジエチルカルバモイル)-2-オクテン-7-イノエート共存下,-78度で4当量のt-BuMgClを作用させ0度まで昇温した後,塩酸でクエンチすると,エチル[4,4-ビス[(ベンジルオキシ)メチル]-2-[(E)-(N,N-ジエチルカルバモイル)メチレン]シクロペント-1-イル]アセテートを単一の異性体として収率良く得ることができた.また,重塩酸でクエンチすると,ビニル位およびエステルのα位水素が重水素化されたことより,反応中間体として官能性ジマグネシオ体が形成され,触媒的メタル化環化反応が進行したと考えられる.更に,中間に生じたジマグネシオ体にアリルブロミドを反応させると,一挙にビニル位、エステルのα位の両方に炭素-炭素結合形成反応をおこなうことができた.FeCl_2を量論量用いた場合は,中間体に生じるフェラサイクルに求電子試薬を反応させると,エステルのα位のみにしか求電子試薬の導入がおこなえなかった.しかし,FeCl_2を触媒量用いた場合は,ビニル位およびエステルのα位の両方に炭素鎖を導入できたことから,触媒反応で調製したジマグネシオ体の方が,量論量で調製したフェラサイクルに比べ,反応性が向上していることが分かった.
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