2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20750072
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
星野 雄二郎 Yokohama National University, 大学院・環境情報研究院, 特別研究教員 (70359701)
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Keywords | 合成化学 / 多官能性化合物 / 有機化学 / ヒドロキサム酸 / ニトロソ化合物 / 炭素-窒素結合形成反応 / 金属触媒反応 / バナジウム錯体 |
Research Abstract |
含窒素有機化合物は医薬、農薬、有機材料科学などの広範な分野において利用される重要な化合物である。また、近年の環境に配慮した持続可能社会を目指した世界的な潮流から、廃棄物の排出がより少ないクリーンな触媒的結合形成反応の開発が望まれている。そこで、本研究では有望な炭素-窒素結合形成反応であるニトロソーエン反応およびDiels-Alder反応に着目し、未開拓であった前周期遷移金属錯体を触媒とする新規触媒反応を検討し、選択的かつ効果的な炭素-窒素結合形成反応の構築を目的とする。平成20年度では、バナジウム触媒を用いたニトロソ化合物の発生条件を種々検討したところ、わずか1mol%の触媒を用いて、室温、1時間で反応基質であるジエンが完全に消失し、対応する環化物が定量的に得られる反応を見出すことに成功した。このとき、ジエンと窒素化剤と酸化剤の当量比は1:1:2で、窒素化剤を過剰量使用することなく実施できる効率的な触媒反応を構築できた。平成21年度では、官能基共存性を中心に検討したところ、興味深いことにヒドロキシ基やカルボキシ基が存在していても反応は円滑に進行し、対応する環化物を適度な収率で与えることが明らかとなった。これは、おそらく、ニトロソを発生させる原料であるヒドロキサム酸が、バナジウムに強く配位しており、他の触媒反応が抑制されたためではないかと推定される。以上のように、全合成の後半部分で窒素官能基を導入できる新規手法として期待が持たれる触媒反応の構築に成功した。この反応の応用例として、天然物など多官能基化された含窒素有機化合物の全合成への利用が挙げられる。
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