2008 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン性錯体の電気化学的合成法の開発と有機合成への応用
Project/Area Number |
20750080
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
光藤 耕一 Okayama University, 大学院・自然科学研究科, 助教 (40379714)
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Keywords | カチオン性錯体 / 有機電気化学 / 有機電解 / ホモカップリング / ボロン酸 / Wacker反応 / Michael付加 |
Research Abstract |
本研究の二本柱は"新規カチオン性錯体の合成法の確立"と"カチオン性錯体生成プロセスを組み込んだ分子変換反応の開発"である。平成20年度は新たなカチオン性錯体の合成法の開発と既に合成法を確立したカチオン性パラジウム錯体を用いた反応開発を中心に研究を行った。 新たな中心金属として、ニッケルを選び、様々なニッケルアルキラートを用いてカチオン性ニッケル錯体の合成と本法を組み込んだ電解反応プロセスの開発を目指し、研究を行った。その結果、カチオン性ニッケル錯体が興味深い触媒活性を示すことが明らかとなったので、引き続き研究中である。また、pincer型のカチオン性ニッケル錯体の電気化学的調製法の開発にも成功し、得られたカチオン性pincer型ニッケル錯体がMichael付加反応に極めて高い触媒活性を示すことを見出した。本成果の一部はTetrahedron Letters誌に掲載された(Tetrahedron Lett. 2008, 49, 7287-7289)。現在、本錯体合成法の条件最適化を行うと共に、Michael付加の適用範囲を調べている。 カチオン性パラジウム錯体生成プロセスを用いた有機電解反応として、新たに分子内Wacker型反応を開発した。本成果は電気化学会誌に掲載された(Electrochemistry 2007, 76, 859-861)。また、新たにアリールボロン酸のホモカップリング反応を開発した。本系は活性なカチオン性錯体の調製と還元的脱離により発生するPd(0)をPd(II)に再酸化する際に電解反応を利用したものである。従来法として酸素を酸化剤に用いる系がよく知られているが、この場合は酸素がPdにとりこまれる。本法は酸素フリーな条件で反応をおこなっているので、酸素を含まないPd(II)が系中で発生する。そのため、従来系とは全く異なる反応性を示すことが期待できる。実際に、本系は基質適用範囲が極めて広く、電子求引性基・供与性基いずれを有するアリールボロン酸を用いてもホモカップリング反応が高い反応性を示し、収率良くビアリールが得られることを見出した。本研究の成果もTetrahedron Letters誌に掲載され(Tetrahedron Lett. 2008, 49, 6593-6595)。なお、反応条件の最適化が必要ではあるものの、アリールボロン酸エステルも本反応に適用可能であることが明らかとなった。アリールボロン酸エステルの反応においては溶媒として用いるアセトニトリルと水の混合比によって収率が激変するので、それぞれの基質に適切な混合比の溶媒中で反応を行うことで、対応するビアリールが良好な収率で得られた。これらの研究成果をまとめた論文を現在投稿準備中である。
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Research Products
(24 results)