2008 Fiscal Year Annual Research Report
マルチ化された一重項ビラジカルの合成と構造・物性解析
Project/Area Number |
20750098
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 繁和 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00312538)
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Keywords | 一重項ビラジカル / 複素環構造 / 酸化還元特性 / 結晶構造解析 / 立体配座 / 有機エレクトロニクス / 速度論的安定化 / 低配位リン化合物 |
Research Abstract |
室温・空気中で取り扱い可能なリン複素環一重項ビラジカル(1,3-ジホスファシクロブタン-2,4-ジイル)ユニットを複数個分子内に導入すると、ビラジカルユニット間に明確な共役構造は無くとも相互作用が発現することを明らかにした。すなわち、ビスー、およびトリス(メチレン)ベンゼン構造をスペーサー部位としてビラジカルユニットを連結して「オリゴ(ビラジカル)」を安定に合成し、その電気化学特性を解析したところ、ビラジカル部位からの電子放出が段階的に生じることが観測された。このことは、ビラジカルユニットが空間を介して相互作用することを示唆する知見である。またさらに、一重項ビラジカル部位が電子移動の経路を形成できることを示しているとも言える。このような特徴から、一重項ビラジカル構造を利用することによって、パイ平面分子構造の積層を基本とする従来の有機エレクトロニクス材料の設計指針にとらわれない、新たな機能性物質の創製が可能であることが期待される。その一方、オリゴ(ビラジカル)の合成においては、難溶性で物性測定が困難となる分子系が幾つか見出された。この問題は有機エレクトロニクス材料の開発において良く見られるが、溶解性を上げるためのユニークな分子デザインの指針を確立することもでき、これは実際に材料開発で利用可能と思われる。合成した幾つかのオリゴ(ビラジカル)の分子構造をX線回折によって解析したところ、ビラジカルユニットが空間的相互作用の影響と考えられる立体配座が同定された。
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