2009 Fiscal Year Annual Research Report
マルチ化された一重項ビラジカルの合成と構造・物性解析
Project/Area Number |
20750098
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
伊藤 繁和 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (00312538)
|
Keywords | 一重項ビラジカル / 複素環構造 / 酸化還元特性 / 超共役 / 結晶構造 / 立体配座 / 有機エレクトロニクス / 速度論的安定化 |
Research Abstract |
かさ高い置換基で立体保護されたリン複素環構造を有する一重項ビラジカル(1,3-ジホスファシクロブタン-2,4-ジイル)ユニット間に発現する相互作用に関する新規な知見を得た。すなわち、ビス(メチレン)ビフェニル骨格をビラジカル連結部位として二つのビラジカルユニットを連結した「ビラジカルダイマー」を合成し、その電気化学挙動について検討したところ、これまでの検討から示唆されていた空間的な経路によるビラジカルユニット間相互作用をより強く支持する酸化還元特性が見出された。これに加えてさらに、ビラジカルユニットを連結するビフェニル骨格の特徴を有効に利用することによって、スルーボンド経路によるビラジカルユニット間相互作用の発現を示すデータも得ることができた。これらの知見は、一重項ビラジカルを利用することによって、従来の有機電子材料では必須となるパイ平面の有効な重なりを用いなくとも、電子移動パスを形成できることを示しているだけでなく、通常の有機共役構造に異常な電子状態を形成させる効果を一重項ビラジカルがつくり出せることを示す結果である。続いて、特異な有機エレクトロニクス材料創製への試みの一つとして、一電子酸化還元によるラジカルイオンの発生を確認し、導電性物質への変換について基本的な知見を得た。これに関して、モデル分子を用いたDFT計算を行い、ラジカルイオンのスピン密度がビラジカルを形成する分子骨格上に大きく存在することを確認したが、スペーサーの構造によっては比較的大きなスピン密度がスペーサーに存在することも確認された。
|