Research Abstract |
本研究では,有機電界効果トランジスタ(有機FET)に代表される有機エレクトロニクス分野への応用を目標に,実用可能な優れた有機電荷輸送材料開発に関する研究をおこなう.有機電荷輸送材料としては,ベンゼン環とピロール環,フラン環,チオフェン環などのヘテロ芳香環が直線状に縮環したヘテロアセンに着目する.今年度の検討により,以下の結果を得た. 1.ベンゼン環,フラン環,ホスホールオキシド環が縮環したベンゾホスホロ[3,2-b]ベンゾフランの合成に初めて成功した.導入したホスホールオキシド骨格の効果によって,大きなストークスシフトを示し,90%以上の蛍光量子収率をもつ有用な発光材料となることを明らかにした. 2.ジベンゾ[d,d']ベンゾ[1,2-b:4,5-b']ジフラン(DBBDF)の2,8位または3,9位に直鎖アルキル基,アルコキシ基,またはアリール基それぞれ二つが置換した一連の誘導体を合成し,電子構造にに対する置換基効果を明らかにした.3,9位にアルキル基もしくはアルコキシ基が置換した誘導体は,サーモトロピック液晶性を発現することがわかった.一方,2,8位置換体では液晶性は示さず,液晶性発現に置換位置が大きく影響することを明らかにした. 3.3,9位にアルキル基もしくはアルコキシ基が置換したDBBDF誘導体の真空蒸着膜をもちいてFET素子を作成したところ,0.4×10^<-2>cm^2/Vs程度の高い移動度を発現した.さらに,熱処理することで,トランジスタ特性が向上することがわかった.これは,加熱によって分子配列の秩序性が向上したためと考えている.
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