2009 Fiscal Year Annual Research Report
環境応答性金属ナノ粒子を用いた光増感機能制御システムの構築
Project/Area Number |
20750103
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
新森 英之 University of Yamanashi, 大学院・医学工学総合研究部, 准教授 (40311740)
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Keywords | 金属ナノ粒子 / 光増感物質 / ボロン酸 / 糖質 / 分子認識 |
Research Abstract |
金属ナノ粒子表層における分子認識を伴った光増感機能の制御システムの構築を目指して、今回は光増感物質としてピレン誘導体に焦点を当てた。ここでの分子認識では癌細胞増殖の主なエネルギー源と成り得るグルコース等の糖質を対象としたため、ピレン骨格へ糖質インターフェイスとなるボロン酸を導入した。光照射によるボロン酸修飾ピレン誘導体の一重項酸素発生能を化学クエンチャーを用いて検討した結果、量子収率が約0.9以上となり、効率的な一重項酸発生が可能であることを確認した。また、これまでの金属ナノ粒子に関する検討により、糖質還元金属ナノ粒子の合成法は確立できている。そこで、金属ナノ粒子表層にボロン酸修飾ピレン誘導体を導入する手法を調査した。塩基性水溶液中において蛍光スペクトルを測定したところ、金(Au)ナノ粒子にボロン酸修飾ピレン誘導体を一定量添加することで450nm付近に極大波長を示す新たな蛍光バンドが観測された。関連の参照化合物を用いたコントロール実験の結果を踏まえて、この蛍光スペクトル変化はボロン酸修飾ピレン誘導体が金ナノ粒子表層に存在している糖質と相互作用することで、ナノ粒子に複合化されたためであることが示唆された。 次に、得られたボロン酸修飾ピレン誘導体と金ナノ粒子との複合体にグルコース,マンノース,ガラクトース,キシロース及び1-0-メチルグルコシドの5種の単糖類をそれぞれ添加し、蛍光挙動の変化を評価した。その結果、糖質添加に伴って複合化によって出現した450nm付近の蛍光バンドが減少し、ピレン誘導体のモノマー発光に由来する387nmの蛍光強度の明らかな増加が観測された。この現象は添加した糖質がボロン酸部位と相互作用することで、光増感物質の金ナノ粒子からの解離に起因すると示唆された。従って、金属ナノ粒子表層でのボロン酸と糖質の相互作用を利用することで光化学的機能を制御できるシステムが構築可能であることが明らかとなった。
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