2009 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ結晶の二光子誘起電子移動の評価と微細加工技術への応用
Project/Area Number |
20750110
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中嶋 琢也 Nara Institute of Science and Technology, 物質創成科学研究科, 助教 (70379543)
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Keywords | ナノ材料 / 光物性 / 合成化学 / 複合材料・物性 / 半導体ナノ結晶 / 発光 / 二光子吸収 / 微細加工 |
Research Abstract |
最近、半導体ナノ結晶の発光特性を利用したセンサーが提案されているが、その多くは半導体ナノ結晶と被検体間のエネルギー移動または電子移動によるナノ結晶の発光変化を検出原理とするものである。しかし、通常の有機分子と異なり半導体を構成要素とする量子ドットの励起状態は複雑であり、量子ドットの励起状態の効率的な利用にはその正しい理解が必要である。我々は、イオン液体を低温マトリクスとすることでCdTeナノ結晶の発光効率が100%まで向上することを見い出し、その低温発光特性からCdTeナノ結晶の励起状態における微細なエネルギー分裂(ΔE)を明らかにした。すなわち、スピン交換相互作用によりCdTeナノ結晶の最低励起状態はbright excitonとdark excitonに分裂する。さらに、そのエネルギー分裂(ΔE)はサイズに依存することが理論的に示されているが、実験的に初めてΔEのサイズ依存性を実証した。 次に、dark excitonとbright excitionを考慮したCdTeナノ結晶の電子移動機構を考察するために、イオン液体を低温マトリクスに用いてCdTeナノ結晶-アクセプターシステムの低温発光測定を行った。その結果、電子移動速度が温度減少とともに遅くなることが分かった。すなわち、bright excitonとdark excitonからの電子移動速度定数をK_<ET-B>ならびにK_<ET-D>とするとK_<ET-B>>>K_<ET-D>であり、K_<ET-D>は放射速度K_Dと同程度である。従って、dark excitonが支配的になる低温状態においては、アクセプターの消光効果は弱まる。このように、イオン液体を低温マトリクスとした測定から、励起子微細構造を考慮したCdTeナノ結晶からの電子移動機構を世界で初めて提案することができた。
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Research Products
(7 results)