2010 Fiscal Year Annual Research Report
アセチリド錯体を用いた分子性磁性体・ナノ磁性体の開発
Project/Area Number |
20750119
|
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
西條 純一 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 助教 (00390641)
|
Keywords | 分子性磁性体 / 弱強磁性 / tetrathiafulvalene / TTF / 遷移金属錯体 |
Research Abstract |
アセチリド錯体を用いた磁性体開発の一環として,導電性分子として知られるTTF骨格を持つ分子を配位子とした新規磁性錯体[CrCyclam(C≡C-5-methyl-4'5'-ethylenedithio-TTF)]^+(以下[1]^+と表記)を開発した.本錯体はTTF骨格に由来する可逆的な酸化還元を示す.[ClO_4]^-や[BF_4]^-といった四面体アニオンの存在下で電解酸化を行うことで磁性結晶[1][Anion]_2(PhCl)_2(MeCN)を得た.本結晶中では,隣接する錯体間で配位子のTTF骨格を重ねるように錯体が配列し,+1価の電荷とそれに伴うS=1/2のスピンが隣接する分子間で非局在化し共有されている.このTTF骨格上のスピンと,中心金属であるCr^<3+>のS=3/2のスピンとの間には2J/k_B=-30Kという非常に強い交換相互作用が働いていることも明らかとなり,エチニル基のC≡C三重結合を使って磁性イオンと配位子との間に強い相互作用を実現するという分子設計指針の正しさが実証された.この結晶はアニオンの違いによらずおよそ23Kで弱強磁性転移を示すが,その自発磁化の大きさは[ClO_4]^-塩で0.016μ_B,[BF_4]^-塩で0.01μ_Bと大きな違いがある.この弱強磁性は,錯体そのものの異方性に由来するスピンの傾きが結晶中で打ち消されず残っていることに由来していると考えられる.
|
Research Products
(5 results)