Research Abstract |
本研究の目的は,酸化亜鉛共存下でポリ塩化ビニル(PVC)を比較的低温度にて熱処理することにより,PVCに含まれる塩素が酸化亜鉛によって定量的に引き抜かれるメカニズムについて検討すること,および得られる残留固体を触媒や吸着剤などとして応用する方法を提案するものである。昨年度までは純粋なPVC(硬質)および可塑剤入り(軟質)PVCの低温脱塩素反応を中心に取り組んだ。本年度は,残留固体(脱塩素PVC)を濃硫酸と反応させることで得られるスルホン化物の特徴をより明確にする点に注力した。XPS分析から,このスルホン化物に含まれるイオン交換基はスルホ基(-SO_3H)であり,CHNS元素分析から求めたC:Sモル比(=18:1)と中和滴定により求めたイオン交換容量(約2meq/g)を比較した結果,樹脂中のスルホ基は実質上すべてイオン交換基として機能することが明らかとなった。加えて,スルホン化物に対する有機化合物の気相からの吸着,塩基性化合物の水溶液からの吸着,さらに酸触媒活性試験を実施した。その結果,脱塩素PVCから調製したスルホン化物は,芳香族炭化水素と強く相互作用する固体であることがわかった。また,塩基性化合物の吸着量は,スルホン化物のイオン交換容量(約2meq/g)とほぼ同等であり,スルホ基が吸着点として機能することがわかる。エタノールの気相脱水反応試験を,80-290℃での昇温反応および130℃での定温反応により行った。130℃での反応生成物はジエチルエーテルのみであり,反応を開始して27時間経過しても,この高い反応選択性を維持した。さらに,290℃まで昇温しても反応活性を示したことから,スルホン化物は不活性雰囲気において300℃程度まで安定であることもわかった。
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