2008 Fiscal Year Annual Research Report
DNA認識による光線力学的療法用光増感剤の活性制御
Project/Area Number |
20750131
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
平川 和貴 Shizuoka University, 工学部, 准教授 (60324513)
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Keywords | 光増感剤 / 光線力学的療法 / 一重項酸素 / DNA / 電子移動 / エネルギー移動 / アルカロイド / ポルフィリン |
Research Abstract |
本研究の目的は、光化学反応をがん治療に応用した光線力学的療法に用いる光増感剤の活性制御である。今年度、DNAに結合した状態で発現する光増感反応による一重項酸素生成活性を検討した。これまでは、DNAをアニオン性ポリマーとして考えていたが、塩基配列の異なるオリゴDNAを用いた実験をアルカロイドのベルベリン、パルマチンを用いて行った。ATのみの配列のとき、最も長い励起寿命の延長(70 psから7 ns)がおき、一重項酸素生成収率も最も増大(0から7%)した。GCのみの配列のDNAは安定性の問題で検討できなかったが、AT配列にGCが入ると励起寿命の延長および一重項酸素生成収率の増大は抑えられた。光増感剤とDNAとの結合定数は、GCにより小さくなった。結合定数の温度変化から結合のエンタルピー変化を求めるとその変化量もGCによっておよそ半分程度まで小さくなった。以上は、GCを含む配列では、光増感剤とDNAの相互作用が弱められることを示している。DNAに結合した一重項酸素からの近赤外発光を時間分解で測定したところ発光の立ち上がりに10μs以上を要することが観測された。コントロールに用いた水溶性ポルフィリンからの一重項酸素生成は励起直後に観測されたため、DNAに結合した光増感剤から溶存酸素へのエネルギー移動は、DNAの立体効果によって抑制されることが明らかとなった。この結果は、これらのアルカロイドが励起三重項から酸素にエネルギー移動している証拠であるとともに10μsの十分に長い励起三重項状態の寿命が光増感剤には求められること示している。これらは、光増感剤の活性制御のために重要な知見である。その後、これらの知見を基に合成の準備を行い、ジアルコキシテトラフェニルポルフィリン誘導体を合成した。今後置換基の導入により、上記の活性制御機能の付与を行う。
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