2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20750140
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
嶋田 直彦 Kyushu University, 先導物質化学研究所, 学術研究員 (10423972)
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Keywords | 核酸 / 高分子構造・物性 |
Research Abstract |
近年、右巻き構造DNA(B-DNA)から左巻き構造DNA(Z-DNA)への構造転移(B-Z転移)が、生体内での重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。B-Z転移はアミン成分を有する化合物によって引き起こされることが知られている。しかし、生理的条件下で効果的にB-Z転移を誘起する化合物の例は非常に少なく、特にポリアミン骨格を有する化合物による転移の例は報告されていない。本年度は、ポリアミン骨格を持つポリリジンに水溶性のデキストランをグラフトさせたカチオン性グラフト共重合体(PLL-g-Dex)がpoly(dG-dC)・poly(dG-dC)のB-Z転移を誘起することをCD測定により明らかにした。また、コントロールとして用いたポリリジンでは転移は観測されなかった。この結果より、グラフトされているデキストランの関与が示された。デキストランのグラフト率を変化させた共重合体を合成しB-Z転移に与える影響を調べた結果、高グラフト率の共重合体ほど、効果的にB-Z転移を誘起できることが示された。以上のことから、DNA周辺の水和環境をデキストランが変えることにより、転移を誘起できることが示唆された。また、PLL-g-DexによるB-Z転移の速度を調べたこところ、他の誘起化合物と比べ遅い速度で進行することが分かった。面白いことに、PLL-g-Dexによる転移過程において、中間体を通って進行することがCDスペクトル測定によって、明らかとなった。この中間体は温度やPLL-g-Dexの濃度をコントロールすることで保持できることも分かった。
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