2008 Fiscal Year Annual Research Report
抗ガン剤/層状複水酸化物複合体の合成とその細胞毒性
Project/Area Number |
20750162
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
會澤 純雄 Iwate University, 工学研究科, 助教 (40333752)
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Keywords | 層状複水酸化物 / 取り込み / 抗ガン剤 / ペプチド / ドラッグデリバリーシステム / 細胞毒性 |
Research Abstract |
様々な無機ナノ粒子はドラッグデリバリーシステム(DDS)に利用する新規な材料として注目されている。なかでも無機層状化合物は、工業材料として多量に使用され、新しい材料開発への発展が期待されるナノ材料である。本申請研究課題で取上げる層状複水酸化物(LDH)は、無機層状化合物の一種であり、陰イオン交換能を持つことから、様々なインターカレーション反応を用いた有機/無機ナノ複合体の基盤材料として利用されている。とくに、抗ガン剤ならびに抗生物質など、LDHへの薬剤の取り込みに関する研究が活発に行われている。しかし、薬剤/LDH複合体の細胞毒性ならびに細胞内への薬剤の転送効率の向上に関する研究はほとんど行われていない。本年度は、抗ガン剤として5-fluorouraci1(5-FU)を用い、LDHと5-FUを複合化した5-FU/LDH複合体の合成を試み、さらに、5-FU/LDH複合体の細胞の増殖抑制効果について検討を行った。 5-FU/LDH複合体のXRD、FT-IR、TG-DTAなどの結果から、イオン交換法ならびに共沈法により、5-FU/LDH複合体の合成に成功した。XRDから、1.1nmおよび0.80nmに回折ピークが観察されたことから、LDH層間内の5-FUはLDH基本層に対して垂直ならびに水平方向に配位して取り込まれることがわかった。細胞毒性試験の結果から、L929細胞の増殖率は、5-FU単独に比べ、同量の5-FUを含む5-FU/LDH複合体を添加した方が抑制された。また、HeLa細胞の増殖率も5-FU/LDH複合体を添加することにより抑制されることが分かった。通常、細胞の表面は負電荷をもち、5-FUは陰イオンのため細胞表面の電荷の反発により細胞内へ転送されにくい。とくに、5-FUは代謝拮抗剤のため、細胞増殖を抑制するには、核内への転送が必要である。そこで、正電荷もつLDHとの複合化にともない、細胞表面との電荷の反発が弱まり、細胞内へのエンドサイトーシスが促進されることにより、5-FUが細胞内に転送・核移行し細胞増殖を抑制したと考えられた。以上の結果から、LDHがDDS材料として応用できる可能性が示唆された。
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