2008 Fiscal Year Annual Research Report
コントラスト変調中性子小角散乱を基軸としたバイオミネラリゼーションの分子論的研究
Project/Area Number |
20750172
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 仁 The University of Tokyo, 物性研究所, 助教 (40447313)
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Keywords | 中性子散乱 / コントラスト変調 / 小角散乱 / バイオミネラリゼーション / 炭酸カルシウム / 有機無機ハイブリッド / タンパク質 |
Research Abstract |
生物は、炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの無機物をタンパク質や脂質などの有機物で修飾することで、骨や甲殻等、優れた物性を持つ有機-無機ハイブリッド材料として高度に活用している。この様に生物が生体の内外に無機鉱物結晶を作る作用を「バイオミネラリゼーション」といい、生成される無機鉱物に富んだ組織を「バイオミネラル」と呼ぶ。本研究においては、今まであまり取られて来なかった物理化学的手法でバイオミネラリゼーションの研究を行う。具体的には、中性子散乱法を駆使する事でバイオミネラルの微細構造解析を行い、コロイド科学や界面科学に基づき「有機-無機相互作用」という観点から分子論的にバイオミネラリゼーションを明らかにする事を目的とする。実験課題開始初年度は、アメリカザリガニの外骨格に含まれ、キチン質と炭酸カルシウムを結合させる働きがあると考えられているCAPというペプチドを用い、(1) 時分割動的光散乱法(DLS)を用いたCAPの石灰化阻害活性の研究、及び(2)コントラスト変調中性子小角散乱法を用いたCAP-炭酸カルシウム相互作用の研究、の2つを行った。その結果、DLSにより炭酸カルシウムのミネラリゼーション化速度は、CAPの添加により影響を受けることを見いだした。しかしながら、中性子散乱においては、ミネラル成分からの散乱が非常に弱く、シグナルの検出は困難であった。これはミネラルとCAPペプチドからなる複合粒子のサイズは非常に小さいということを示唆するものであった。
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