2009 Fiscal Year Annual Research Report
環状高分子の流動結晶化から探るシシ構造形成に及ぼす結び目絡み合いの役割
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20750180
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山崎 慎一 Okayama University, 大学院・環境学研究科, 准教授 (40397873)
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Keywords | 環状高分子 / ポリエチレン / 結晶化 / 核生成 / 流動 / 成形加工 / 絡み合い / 高次構造 |
Research Abstract |
【緒言】直鎖状ポリオレフィン類では流動場結晶化においてshish-kebab結晶が生成することはよく知られている。しかし、トポロジーの異なる環状高分子についての流動場結晶化に関する研究は全くない。環状高分子は直鎖状高分子と比べ、絡み合い量が異なるだけでなく、形成される絡み合いの種類にも大きな違いがあり、絡み合いが重要な役割を担っているshish構造形成挙動も大きく異なると予想される。これまで当研究室では、環状ポリエチレン(C-PE)のshish生成速度(I)の過冷却度(ΔT)依存性を、直鎖状ポリエチレン(L-PE)のそれと比較することによって、shish構造形成に及ぼす絡み合いの役割について検討してきた。その結果、C-PEはL-PEに比べてshish生成が困難であることがわかった。これは、環状高分子は絡み合い量が少なく、かつ解けやすい絡み合いが多いため、流動によって鎖が効果的に伸長されにくいので、直鎖状高分子に比べて配向融液が形成されにくくshish生成しにくいためであると推察された。そこで、本研究では、shish構造形成に及ぼす絡み合い種類の効果を明確にすることを狙い、C-PEマトリックスに少量のL-PEを添加したブレンド試料を調製し、C-PEにL-PE由来の"結び目絡み合い"のような複雑で解けにくい絡み合いを導入することによって、shish構造形成に及ぼす絡み合いの種類の効果を明らかにすることを目的とした。 【実験】既報に従い、C-PEおよびL-PEを調製した。合成したC-PEにL-PEを3wt%混合し、試料のブレンドを行った。流動結晶化は、試料を平衡融点以上で1分間アニールした後、結晶化温度Tcまで冷却して等温結晶化を行い、その様子を偏光顕微鏡で観察した。なお、Tcに到達する直前に、ずり流動(ずり速度50s-1、印加時間1s)を加えた。 【結果と考察】C-PE単体について流動結晶化を行ったところ、局所的なshish生成は観察されたが、生成速度を測定するのに十分な量は観察できなかった。一方、ブレンド試料(Blend-PE)の流動結晶化を行ったところ、Blend PEのIはL-PEと同等な高い値を示した。このことから、解けやすい絡み合いしか持たないC-PEに、L-PEが有する結び目(knot)型などの複雑な絡み合いを導入することによって、shish生成が促進されたことがわかる。
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Research Products
(2 results)