2009 Fiscal Year Annual Research Report
原子間力顕微鏡を用いた固液界面における溶媒和構造解析
Project/Area Number |
20760022
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木村 建次郎 Kobe University, 理学研究科, 講師 (10437246)
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Keywords | 走査プローブ顕微鏡 / 計測工学 / 超精密計測 / ナノバイオ / 生物物理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、固体と液体の界面における局所溶媒和構造計測法を開発し、液体分子が取り巻く生体高分子の構造解析を進めることである。 1, 観測結果の定量化 原子間力顕微鏡(AFM)の探針を溶媒和の構造に影響を与えない微小剛体球と考え、溶媒分子と近接したときのみ相互作用が働く、デルタ関数ポテンシャルを探針と溶媒の間の2体ポテンシャルであると近似的すると、AFMで測定する力は、溶媒分子密度分布の勾配に比例することになる。3次元RISM理論や分子動力学法により得られる溶媒分子密度分布と、実験で得られる3次元相互作用力分布を比較することにより、上記の定量化モデルの妥当性を評価することができる。実際に、雲母/水界面、自己組織化単分子膜/有機溶媒界面など、各種固体/液体界面にて、溶媒分子密度と相互作用力分布を比較すると、密度分布が極大値を示す座標に関して、実験と理論の良い一致が得られていることが明らかとなった。特に、雲母と水の界面では、表面において強く構造化した水分子の存在が明らかとなり、以前から間接的に予言されていた界面に存在する氷構造の存在を支持する結果となった。 2, 生体高分子への応用 コラーゲン分子へ本計測手法の応用を試みたが、ファイバー状の分子がバンドル化してしまい、単体を基板に吸着させることが困難であった。そこで、共同研究者の深見泰夫教授,岩崎哲史博士からアフリカツメガエルの卵の表面から脂質,膜タンパク質の複合体を取り出し、ベシクルフュージョン法にて基板に展開し、試料として用いた。基板に上記複合体を吸着させた状態で、抗体分子の膜への接着を確認でき、生体反応をAFM観察基板上で再現することに成功した。今後は、生体反応時に溶媒分子の構造がどのように関わっているか、反応速度を制御するとともに、3次元溶媒和構造計測法を生体反応のメカニズム解明に応用していく。
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