Research Abstract |
生細胞内部を低侵襲に3次元可視化する技術の開発は, 生命機能の解明に極めて有用である. 非線形光学顕微鏡は, 生体可視化のための有力な手法と認識されつつあり, 2光子励起蛍光顕微鏡やコヒーレント反ストークスラマン散乱顕微鏡(CARS)など, 様々なコントラスト機構に基づく方式が開発されている. 我々は, 非線形光学顕微鏡の一方式として, 電子由来の4光波混合過程を利用した誘導パラメトリック発光(stimulated parametric emission : SPE)顕微鏡を提案している. SPE顕微法の特長の一つに, 励起光パルスの時間幅が短いほど信号強度が増大し, 高感度化する点が挙げられる. 一方, レーザー技術の進展に伴い, 現在では, サブ10fs領域のパルスレーザーが市販されている. このような極短光パルスは, 光学素子の分が招く波長ことの時間ずれによって, パルス時間幅広がりが生じやすく, その扱いが困難である, しかしながら, 上記のようなSPE顕微法の特長を鑑みると, SPE顕微鏡に極短光パルスを適用できれば, 極めて魅力的である. 本研究では, サブ10fsパルスをSPE顕微鏡に導入し, 対物レンズの集光点においてサブ10fsパルスを発生することに成功した. そして, 無染色細胞の高感度3次元観察を行い, サブ10fsパルスを用いることで極めてクリアなSPE像が得られることを確認した. また、本研究を進めるうちに、誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering, SRS)という物理現象を用いた新規非線形光学顕微鏡方式の着想を得るに至った。SRS顕微法を用いると、無染色細胞の分子振動を検出することにより、極めて高コントラストな3次元可視化を実現できることが判った. 本方式を2008年11月に日本学会年次講演会で発表し、ベストプレゼンテーション賞を受賞した。また、SRSの感度限界がCARSと同等であることを指摘する論文を雑誌論文(Optics Express)に発表した。
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