Research Abstract |
本研究の目的は, MEMSおよび電子デバイスの性能・信頼性評価試験の要素技術となり得るマイクロ・ナノ構造体の応力・歪み成分評価手法を, 世界に先駆けて提案・開発することである. 具体的には, 薄膜等のマイクロ・ナノスケール寸法を有する微小試験片に対して二軸方向の引張応力を高精度に与えることが可能な二軸薄膜引張試験技術を新開発し, 種々の応力・歪み状態を作り出したシリコン系材料のマイクロ・ナノ構造体に対してレーザーラマン分光その場計測を行うことで, 応力・歪み量ならびにこれらの成分の定量評価を実現可能な試験技術を確立する. 当申請研究の初年度にあたる平成20年度, 上記目的を達成するために必要な薄膜試験片用二軸引張試験装置の設計・開発を行った. 二軸引張試験装置をラマン分光器のステージ上に設置する必要があるため, 小型化設計に努めた. nmオーダの分解能を有するピエゾアクチュエータを4機用い, 1軸上の相反する方向に2機ずつ設置することで, 負荷の大きさによらず, 試験片の中心を移動させることなく引張負荷を2方向に個別に与えることが可能な構成とした. また, 変位の拡大機構を有するアクチュエータケースにピエゾアクチュエータを収納することで, 小型化を実現した. 拡大機構には, 降伏応力が比較的高いアルミ合金(7075T6)を用い, 放電ワイヤカットにより"てこ"の原理を用いた構造とした. 同部分の構造設計には, 汎用有限要素解析ソフトを用い, 変位の増幅率が大きく, かつ, ヒンジ部に発生する応力が小さい最適形状・寸法を導出した. 設計した装置の寸法は240×240×30mmであり, その中に, ピエゾアクチュエータ, ロードセル, 差動変圧器を4機ずつ搭載した. 試験装置の検定作業を, 単結晶Si試験片を用いて行い, 本研究の遂行に十分な性能を有していることを確認した, 併せて, ラマン分光器直下に試験装置を設置し, 引張応力とラマンスペクトルとの相関関係を調べた.
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