Research Abstract |
本研究の目的は,MEMSおよび電子デバイスの性能・信頼性評価試験の要素技術となり得るマイクロ・ナノ構造体の応力・歪み成分評価手法を,世界に先駆けて提案・開発することである.具体的には,薄膜等のマイクロ・ナノスケール寸法を有する微小試験片に対して二軸方向の引張応力を高精度に与えることが可能な二軸薄膜引張試験技術を新開発し,種々の応力・歪み状態を作り出したシリコン系材料のマイクロ・ナノ構造体に対してレーザーラマン分光その場計測を行うことで,応力・歪み量ならびにこれらの成分の定量評価を実現可能な試験技術を確立する. 最終年度となる平成21年度は,まず,初年度に設計・開発した薄膜用二軸引張試験装置を用いたシリコン薄膜の引張予備実験を行った.開発した試験装置を用いて,厚さ2~10μmの単結晶Si二軸試験片に,任意の大きさの引張応力を正しく付与可能なことを確認した.次に,試験装置をラマン分光器のステージ上に設置し,単結晶Si二軸試験片に引張負荷を掛けながら,ラマンスペクトルの計測を行った.この実験では,二軸試験片の中央付近に深さ200nm,4μm×4μmの窪み形状を形成し,2方向から任意の引張速度比で試験片に引張負荷を加えた状態で,窪み構造体周辺のラマンスペクトルを取得した.その結果,一軸と二軸の引張負荷を加えた状態で得られた構造体周辺のラマンシフトマップは異なり,構造体周辺には多軸応力場ができていることを視覚的にとらえることに成功した.また,得られたラマンスペクトルパラメータ(ピークシフト,強度,半値幅)と有限要素解析に基づく応力成分・大きさとを比較することで,各パラメータと応力とには相関があることを確認した.この技術により,マイクロ~ナノサイズの単結晶Si構造体の応力分布ならびに成分を,詳細に計測できる可能性があることがわかった.
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