Research Abstract |
フェムト秒レーザの斜め照射により得られた3種類の非対称微細加工表面について,輸送性能を評価した.ここでは,これらの表面における摩擦の非対称性を定量的に評価するために,微小物体の摩擦角を計測した.特に,周囲の湿度が摩擦特性におよぼす影響を検証するために,湿度の異なる環境下で実験を実施した.また,2種類の微小物体を用意し,微小物体のサイズおよび質量が摩擦特性におよぼす影響についても考察した.その結果,周囲の湿度が上昇するにつれて摩擦角が大きくなること,湿度が小さくなるにつれて摩擦の非対称性が小さくなること,湿度によらず摩擦の非対称性がみられること,微小物体の質量や接触面積が摩擦角に大きい影響をおよぼすこと,がわかった.従来のバイモルフ型アクチュエータにおいては,200Hz以上の駆動周波数における振幅特性が低く,微小物体の輸送が不可能であった.そこで,より広範囲な周波数領域における輸送を可能にするために,積層型ピエゾアクチュエータを用いた振動装置を開発した.その結果,600Hzまでの駆動周波数において微小物体の輸送が可能になった.これらの装置を用いて微小物体の輸送実験を行った.その結果,より高速な輸送が実現できる振動周波数を確かめることができた.また,駆動周波数によって輸送方向の反転や往復,回転といった様々な運動が生じることがわかった.その一方で,フィーダ表面の性状によらず輸送方向が反転する駆動周波数があることが明らかになった.これは,本研究で取り扱っている微小物体が,フィーダ表面の凝着力と振動による慣性力双方の影響を受けていることを意味している.すなわち,数十から数百ミクロンオーダーの微小物体を操作する場合には,フィーダの駆動周波数が小さければフィーダ表面の接触特性が支配的になる一方で,駆動周波数を上昇させることにより慣性力が支配的となることを意味している.
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