Research Abstract |
本研究は,バリアフリーの整備が十分になされておらず車いす利用者の入場が不可能なものも多い歴史的建造物や史跡・景勝地において,景観保護やオーセンティシティの維持に配慮し文化財を傷つけることなく車いす利用者が健常者と同じ経路で観賞することを可能にする人間搭乗型移動支援機器の開発を行うことにより,環境を改変することなく利用できるバリアフリー技術を提案するものである. 平成22年度は,前年度に開発した形状可変4節リンクを用いた複数車輪式階段昇降機構の試作機TBW-1に関して,その改良設計と予備実験による評価を行った. まず,この4節リンク機構は各頂点に車輪を備え,能動対偶とこれら車輪を差動歯車により干渉駆動することで,車輪による走行と変形を2つのモータで制御可能となっているが,車輪の運動を拘束するチェーンにゆるみが生じており,これによりスムーズな変形や平地走行が不可能であった.これに対し,テンショナを新たに設計し導入することで,スムーズな変形動作と平地走行動作を可能とした. また,この機構は平行四辺形・一直線・くの字型の3種類の形態に変形可能であるが,一直線モードは一種の特異点であり,厳密に一直線とならないと変形は不可能である.しかしながら前年度に開発した試作機では機械的たわみなどにより厳密な一直線状態に制御することが難しく,しばしば変形が不能となる不具合があった.これに対し,一直線状態を検出するセンサを関節部に設け,この信号を制御に用いることで,一直線から他の2つのモードへ確実に変形することが可能となった. これらの改良を施した試作機を用い,平地走行,方向転換,その場変形等の基本的な動作実験を行い,その性能を確認した.
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