2009 Fiscal Year Annual Research Report
ロボット機構の運動学の視点に基づくタンパク質の内部運動特性の解析
Project/Area Number |
20760174
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Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
有川 敬輔 Kanagawa Institute of Technology, 工学部, 准教授 (50350674)
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Keywords | ロボット機構 / 蛋白質 / 運動学 |
Research Abstract |
前年度は,計算機内に人工的に生成した平面タンパク質モデルを用い,その内部運動特性の解析手法を,ロボット機構の運動学解析手法に基づいて検討した.本年度は,この解析手法を実際のタンパク質の3次元構造データに対しても適用できるように理論的拡張を行い,それを実装する計算機プログラムを開発し,さらに,これにより解析したタンパク質の内部運動特性と実験的に明らかにされている内部運動特性とを比較することを行った.本手法においては,タンパク質を,主鎖上に並ぶ2面角(φ,ψ)を関節とし,α炭素間を結ぶ線分長さの歪ベクトルを制御目的変数とするロボットマニピュレータと見なす.また,変形の度合いを評価するための指標を,指定部位を囲むα炭素間を結ぶ線分長さの総和の歪によって定義する.そして,この比較的シンプルなモデルに対して,前年度に考案した,ロボット機構の可操作性解析,コンプライアンス解析等を応用した解析手法を適用する.例として,ラクトフェリン(PDB-ID:1LFH)の3次元構造データを用いて,ゆらぎと外力応答に関する解析を行った.ゆらぎの解析によって,各2面角の動きの頻度を求めたところ,構造変化に主要な役割を果たす残基(実験的に明らかにされている)の近傍の2面角にピークが現れることを確認した。また,リガンドとの結合に関わる残基のα炭素を作用点として均衡外力を作用させたところ,リガンド結合時に生じる構造変化と同様の動きが生じることを確認した.このことから,本研究で提案したロボット機構の運動学解析に基づく解析手法によれば,少ない計算コストでタンパク質の内部運動特性の概略を予測することが可能であると考えられる.
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