Research Abstract |
測定システムの改良および測定精度の向上を図るとともに,電磁鋼板のグレードの違いや異方性が厚さ方向の圧縮応力下における磁気特性に及ぼす影響について検討した。 1) 測定システムの改良および測定精度の向上 測定範囲以外にも試料が支持されるプレートを用い,波形制御などを改良することによって1.55Tまでの測定が行なえるようにし,厚さ方向に圧縮応力を印加した場合の単板の磁気特性測定システム(測定範囲:幅8mm,長さ10mm)を確立した。 2) 厚さ方向に圧縮応力が印加された状態での無方向性電磁鋼板の磁気特性および鉄損特性の明確化 50A290と35A300の圧延方向と直角方向の磁気特性および鉄損の測定を行なった結果,グレードの差異ほとんど寄与せず,圧延方向と直角方向でその影響に大きな差異が見られた。圧延方向に励磁した場合は,厚さ方向の圧縮応力が0.5MPa程度印加されると磁束密度の大きさによらず,透磁率は減少し,鉄損は増加する結果が得られた。また,圧縮応力を10MPaまで増加させたが,鉄損の増加はほとんど見られなかった。一方,直角方向に励磁した場合は,厚さ方向の圧縮応力が増加すると,低磁束密度領域では透磁率は増加するが,鉄損はほとんど変化しない。磁束密度が1T以上では,応力の増加に伴い透磁率は減少するが,鉄損はわずかに増加する結果が得られた。また,圧延方向に励磁した場合は,厚さ方向に圧縮応力が印加されると,ヒステリシス損および渦電流損の両方が増加するのに対し,直角方向に励磁した場合は,ヒステリシス損にはほとんど変化が無く,渦電流損が増加する結果が得られた。 50A290の試料では圧延方向から30度および60度方向に切り出した試料を用いて,同様の測定を行なった結果,それぞれは圧延方向と直角方向の間の特性を示した。以上から,バンドやボルトなどで固定する箇所は,直角方向に励磁される場所で行なう方が,損失増加を防げる可能性があるといえる。
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