Research Abstract |
本年は,人体表面に電極を貼りつけて用いる容量結合型非接触電力伝送システムについて,電流集中による生体への熱作用の影響を減らすための研究を行った.水袋(ボーラス)を送電電極と人体の間に入れることにより,電極付近の生体組織のSAR (Specific Absorption Rate)を小さくし,送電電力及び受電電力をともに大きくすることが目的である.ボーラスの導電率を変化させたときの体内埋込型機器の受電電力を解析により求めた.日本人成人男性の34組織人体モデルの体表面に,水袋(ボーラス)を付けた送電電極を設置し,人体モデルの腹部深部に埋込型機器を置いた.解析にはFDTD法を用いた.その結果,最大受電電力は,導電率0.2S/mの場合に最も大きく,周波数42MHzで1.74mWであることがわかった.ボーラスにより送電電極付近のSARを小さくすることが可能となり,体内深部まで電力を伝送することが可能になった.なお,34組織中でSARが大きくなった部位は,筋,腎臓,皮膚,志望,小腸,胃,大腸であり,その中でも筋と腎臓のSARが最も大きかった. また,受電電極および送電電極の面積をそれぞれ変えた場合についても検討を行った.その結果,いずれの面積も大きくした方が受電電力は増加するが,送電電極面積においては15cm^2程度が最も効率が良く,これ以上大きくしても受電電力の飛躍的な増加にはつながらないことがわかった. さらには,実験の際には均一組織モデルしか用いることができないため,実験値と比較できるようにするため,34組織の人体モデルと均一人体モデルを用いた場合の受電電力の比較を行った.その結果,34組織の人体モデルと均一人体モデルの受電電力の割合は,3:10であり,均一モデルの実験で得た受電電力の値は,実際に人体に入れたときにはその3/10の値程度に下がることが明らかになった.
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