2008 Fiscal Year Annual Research Report
情報理論的に安全な暗号システムを実現するための理論的研究
Project/Area Number |
20760236
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩本 貢 The University of Electro-Communications, 大学院・情報システム学研究科, 助教 (50377016)
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Keywords | 暗号 / 情報セキュリティ / 情報理論的暗号理論 / 秘密分散法 / 不正検出 / 仮説検定 |
Research Abstract |
情報理論的に安全な暗号システム実現のための理論研究として, 今年度得られた大きな成果は以下の2点である. (1) 弱い安全性をもつ視覚復号型秘密分散法(VSSS)の提案と解析: 従来の秘密分散法では情報漏洩を許す代わりに符号化効率を良くする「ランプ型秘密分散法」という技術が知られている. しかし, 画像を秘密情報とするVSSSに於いて, 情報量の意味で秘密が漏れると画像の一部, あるいは画像そのものがぼんやりと認識されてしまい, 実際には完全に情報が漏洩したことと同じになりかねない. このような事情から, 従来のVSSSの枠組みにはランプ型という概念は馴染まない. そこで本研究では, 情報理論的には秘密画像の情報が漏洩する可能性をもつが, 視覚的には漏洩しない「弱い安全性をもつVSSS」という新しいVSSSの枠組みを提案し, 解析を行った. その結果, 白黒2値画像では, 従来の情報理論的に安全なVSSSと弱い安全性をもつVSSSが本質的に等価となるが, カラー画像に対しては, 後者が安全性を弱める代わりに復号画像の画質を良くすることを示した. また, 弱い安全性をもつVSSSの構成法を2つ与えた. (2)なりすまし攻撃に耐性をもつ秘密分散法: 秘密分散法に於いて, 攻撃者の改竄攻撃成功確率を0に近づけると分散情報のレートが発散することが知られている. そのため本研究では, シェアレートが有限という状況下で秘密情報のブロックサイズを大きくしたときの, なりすまし攻撃成功確率の減衰スピードを求めることを目指し, 攻撃成功確率の最適な指数を決定した. このような情報理論的な議論では, 符号器や復号器が存在定理の形でしか与えられない場合が多いが, 本研究では最適な符号器・復号器の具体的構成法を与えた点も重要である. また逆定理に相当する部分では, 仮説検定, 特にSteinの補題を用いると見通しよく証明が出来ることも明らかになった.
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