Research Abstract |
平成23年度は,大きく分けて2つの研究を行なった.一つ目は,無歪みデータ圧縮のための符号のうち,固定長メッセージ-固定長符号語符号(VF符号)および,その特殊な形態であるとみなすことのできる,固定長メッセージ-固定長符号語符号(FF符号)の冗長度の理論的な解析である,二つ目は,新しく提案されたばかりであり,まだユニバーサル性が証明されていないデータ圧縮アルゴリズムの一つである,部分列数え挙げ(CSE)法について,その理論的な圧縮性能解析である, 昨年度は,FF符号の確率的な冗長度を新しく定義し,これが,今まではその量が定義されていたものの,データ圧縮における操作的な量との対応がつけられていなかった,情報スペクトルの漸近的は幅と等しいことを理論的に証明した,今年度はこの延長で,最悪の冗長度を定義し,この量も同じく情報スペクトルの漸近的な幅に等しいことを理論的に証明した.この結果は,直ちに情報源の十分統計量と結びつけることは不可能であるが,今後,VF符号やFV符号の圧縮性能の解析をさらに進める際に理論的なベースとなることが期待される. また,部分列数え挙げ(CSE)法については,定常無記憶情報源のうちある特殊な場合について,漸近的な圧縮性能が最適ではないことを指摘し,その場合の性能を向上するアルゴリズムを提案した.この圧縮アルゴリズムは,最も基本的なユニバーサル圧縮アルゴリズムであるLynch-Davisson符号の,記憶のある確率過程への拡張とみなすことができると考えられるものの,まだ様々な情報源に対してこの符号がユニバーサルであることは証明されていないので,今回の結果によって,解析が一歩前進したと考えられる.
|