Research Abstract |
本研究の目的は,フィードバックループ内に接続された監視対象について,閉ループ系の観測可能な信号より故障等に起因する監視対象の動特性変化をリアルタイムで検出するオンライン変化検出法を開発することである.本研究課題では,閉ループ部分空間同定法(CL-MOESP法)のオンラインアルゴリズムを利用するため,その漸近的性質と最適性の理論的解明が必須である.とくに一致性は,変化検出時における変化箇所の特定において重要である.本年度の研究成果として,まず,CL-MOESP法の漸近的性質について閉ループ同定のいわゆるTwo-stageアプローチの観点から明らかにした.詳細には,同定対象を含む閉ループ系に雑音と無相関な外部励起信号を印加してシステム同定を行い,同定対象の入出力をその外部励起信号からなる空間へ直交射影することにより,フィードバックの影響を除去できて推定値が漸近的に一致することを示した.また,同定対象の次数推定の意味で確度の高いモデルが得られることを示した。さらに,有限個のサンプルデータを用いたときの推定値の最適性に関する諸性質について導出し,CL-MOESP法が重みつき行列最小2乗推定に帰着できることを示した,本研究成果について実機実験による検証も行い,台車系の変化検出,倒立振子台車系の同定実験や,無線操縦ヘリコプタの飛行高度制御系の閉ループ同定実験から,理論の実用性を確認した,とくに,倒立振子台車系とヘリコプタの同定実験では,直接法に基づく既存の閉ループ同定法と比較して,モデルの次数推定の点においてCL-MOESP法が優れた性質をもつことが実証された。
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