Research Abstract |
社会基盤構造物は, 建設からの歳月を重ね, 老朽化が徐々に, 着実に進行している. 限られた予算で効率的かつ効果的に, 構造物の現有性能や安全性を把握, 維持管理をすることが求められる. 客観的な計測データに基づく, 信頼性の高い, 新たな構造物健全性評価手法が必要である. 本研究では, 構造振動の詳細な計測を可能とする, 多数の無線センサによる社会基盤構造物の多点同期振動計測システムの開発を目的としている. 本システムは膨大な社会基盤構造物の振動状態の詳細な把握を可能とし, 構造現有性能, 安全性評価を大きく向上させるものである. 具体的には, 市販の無線センサを用いて多点同期振動計測システムを実現する. 長大構造物の振動を同期計測するため, マルチホップ通信を用いて通信, 計測制御できるシステムを構築する. また橋梁などの長大構造物の振動レベルは小さいため, 高解像度の計測システムを構築する. 本年度はマルチホップデータ転送ミドルウェアの構築を行い, 多量振動計測データをマルチホップ通信で基地局に転送する仕組みを構築した. 100Hz程度の高いサンプリング周波数での計測を目指すものであるので, 同期計測ができる仕組みを保ったまま, マルチホップデータ転送を実現した. 本ミドルウェアは, 無線センサにより広域な領域のモニタリング可能とするもので, 長大構造物の挙動の詳細な把握に不可欠である. しかしながら, その通信速度が理論上実現可能な値よりも遅いなど改善すべき点があり, 平成21年度の研究で取り組む予定である. また, 高解像度のセンサボードを無線センサノードとともに用いて, 実構造物の振動計測も複数行った. 橋梁の交通振動は十分に把握できる程度の分解能があること, また, 常時微動のように小さな振動であっても本システムにより捉えられることが確認された.
|