2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20760316
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
末次 大輔 Saga University, 低平地研究センター, 准教授 (30423619)
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Keywords | 石灰混合処理土 / 劣化 / 感潮河川水 / 塩分 |
Research Abstract |
本研究では塩分を含む感潮河川水の浸透による石灰処理土の劣化機構を解明するために,人工海水の濃度(NaCl濃度),浸漬時間,ならびに石灰混合量を変化させて,模擬感潮河川水に浸漬させた処理土供試体の物理的,力学的および化学的性質の時間的・空間的変化を詳細に調べた.石灰処理土は塩分を含む河川水と接触すると著しく軟化することを明らかにした.軟化現象は接触面から処理土内部に向かって進行し,その進行速度は海水の濃度が高いときほど,石灰混合量が少ないものほど速いことを明らかにした.さらに,石灰処理土中の軟化した部分では固化成分であるCaが著しく減少するとともにMgが増加することが観察された. 次に,石灰処理土の軟化に及ぼす感潮河川水の主要成分の影響を調べるために,人工海水,NaCl溶液,MgCl_2溶液,MgSO_4溶液を使ったバッチ試験を実施した.Mg塩を含む溶液では溶液中のCa濃度が増加し,それに伴いMg濃度が著しく減少することが確認された.Mg塩溶液によるCa溶出量はNaCl溶液に比べてはるかに大きい.これは石灰処理土の軟化部分におけるCa減少,Mg増加現象と一致する結果であるとともに,Mgの影響が大きいことを示す結果である. 本研究以外に感潮河川水の浸透に石灰処理土の性質変化に関する報告は極めて少なく,それらほとんどはNaCl溶液を使用して研究されており,"真の海水"を用いた研究は他に例を見ない.本研究では,石灰処理土は塩分を含む感潮河川水の接触・浸透によって軟化すること,さらには塩分中に15%程度しか含まれていないMgが固化処理土の軟化の支配的な物質であることを明らかにした.本研究で得られた成果は,現在,感潮河川流域で約20年前に構築された石灰処理地盤が泥寧化している原因を説明できる一つの重要な知見である.
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