2008 Fiscal Year Annual Research Report
気象力学に基づく地球温暖化を想定した可能最大高潮・波浪評価手法の構築
Project/Area Number |
20760325
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉野 純 Gifu University, 大学院・工学研究科, 助教 (70377688)
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Keywords | 海岸工学 / 自然災害 / 防災 / 気象学 / モデル化 / 自然現象観測・予測 |
Research Abstract |
地球温暖化の進行により将来の沿岸域に接近する台風は一層強大化するものと危惧されている. そのような背景の中で, 世界各地の港湾における可能最大高潮・波浪を評価することは火急の課題となっている. 本研究では, 気象力学的手法に基づき現在気候・将来気候の下での可能最大高潮・波浪の評価を行うことを目的としている. 今年度は, まず, 定常台風モデルによる現在気候における理論的可能最強台風強度の評価を行った. 沿岸域の理論的最大台風強度と既往最大規模台風の上陸時気圧とを相互比較することで, 過去の既往最大規模台風に匹敵する規模の台風強度を定常台風モデルにより表現できることが明らかとなった. 次に, 非定常台風モデルのための渦位逆変換法に基づく台風初期値化アルゴリズムの開発した, これにより, 台風進路を少しずつ変えた多数の初期気象場を自在に作成することが可能となり, 台風環境場に適合した可能最大強度の台風気象場の初期条件を合理的に作成できようになった. そして, 伊勢湾地域を対象として既往最大規模台風の台風環境場(伊勢湾台風)を想定して台風初期位置を少しずつ変化させた多数の非定常台風モデルによるシミュレーションを実施し, 現在気候における可能最大高潮・波浪を算定した. その結果, 現在気候の下での台風の上陸時最低気圧は, 伊勢湾台風のそれに匹敵する935hPaとなった. そして, 名古屋港における可能最大高潮(潮位偏差)は4.5mとなり, 可能最大波浪(有義波高)は2.2mとなることが明かとなった. 本手法により評価された可能最大高潮は, 伊勢湾台風の観測潮位である3.55mを遙かに上回る潮位偏差となり, 最悪の進路を取った場合には, 現在気候の下であったとしても伊勢湾台風を大きく上回る高潮被害に繋がる可能性があることを示唆している.
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Research Products
(23 results)