2009 Fiscal Year Annual Research Report
気象力学に基づく地球温暖化を想定した可能最大高潮・波浪評価手法の構築
Project/Area Number |
20760325
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
吉野 純 Gifu University, 大学院・工学研究科, 助教 (70377688)
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Keywords | 海岸工学 / 自然災害 / 防災 / 気象学 / モデル化 / 自然現象観測・予測 |
Research Abstract |
地球温暖化の進行により将来の沿岸域に接近する台風は一層強大化するものと危惧されている.そのような背景の中で,世界各地の港湾における可能最大高潮・波浪を評価することは火急の課題となっている.本研究では,気象力学的手法に基づき現在気候・将来気候の下での可能最大高潮・波浪の評価を行うことを目的としている. 今年度は,まず,将来気候における台風環境場について考察を行った.地球温暖化(AlBシナリオ)を想定した全球気候モデルによる2000年~2100年のシミュレーション結果(CMIP3)のうち,特に台風強度に大きな影響を与える海水面温度データを解析することにより,太平洋上の海水面温度はこの100年間で平均して1~2℃程度上昇する可能性が明らかとなった.2099年9月の太平洋上の月平均海水面温度30.2℃を入力条件とし,定常台風モデルにより可能最大強度を評価したところ中心気圧約880hPaとなることが明らかとなった. 次に,このような将来気候条件の下で発生しうる可能最大級台風の内部構造を,非定常台風モデルにより評価し,渦位逆変換法により初期台風気象場を構築することで,領域大気-海洋-波浪結合モデルによる双方向結合計算を実施した.その結果,将来気候の下での台風の上陸時最低気圧は,現在気候の結果(935hPa)を大きく下回る905hPaとなった.そして,名古屋港における可能最大高潮(潮位偏差)は伊勢湾台風時に観測された3.55mの2倍近い6.5mとなり(現在気候は4.5m),可能最大波浪(有義波高)は2.8mとなる(現在気候は2.2m)ことが明らかとなった,本研究の結果は,将来気候の下で最悪の場合には,名古屋港での計画天端高T.P.+7.5mを上回る想像を絶する規模の高潮が発生する可能性があることを示唆している.
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Research Products
(26 results)