Research Abstract |
本研究の全体構想は, 海岸・海洋に存在する波・流れエネルギーを利用して, バイオミメティックス型流力制御と, これに基づくエネルギー発電技術を開発することである. 当初の予定では,人工筋肉を購入する予定であったが, 購入先の企業が販売中止となってしまったため, 研究の方法および購入物品を変更せざるを得なくなった. このような理由から, 圧電フィルムを基盤とした独自の発電デバイスを開発することとなった. 本年度は, 圧電素材を用いた弾性圧電デバイスを独自開発し, 以下のような研究成果を得た. 1) 波浪, 潮流による弾性圧電デバイスの変形特性に関する実験 (1) まず始めに, シリコンシート, 圧電フィルム, 天然ゴムを積層化した弾性薄型圧電デバイスを試作し, 材料試験を行い, 曲げ, 伸縮, せん断による材料変形特性を明らかにした. (2) 次に, 一様流速を変化させることが可能な回流水槽を用いて, 種々の流れ作用下における弾性圧電デバイスの変形特性を明らかにするとともに, 発生した電力量を計測した. また, 高速ビデオカメラによって材料変形を撮影し, PIV解析によって, 曲率を求め, ひずみを推定することが可能となった. (3) 次に, 任意の一様波列を発生させることが可能な波浪水槽を用いて, 波作用下における弾性圧電デバイスの変形特性を明らかにするとともに, 起電力量の特性を調べた. (2) 波・流れと人工筋肉との強連成シミュレーション技法の開発 (1) で示した実験と同時並行で, 波・流れと人工筋肉(弾性体)との強連成シミュレーションを実施し, 実験や観測では得ることが困難な3次元非定常流体力や流れ場, さらには, 人工筋肉内の3次元的なひずみ分布や応力分布を算定した. なお, この計算技法は, 従来のEuler型とLagrange型のシミュレーション技法における利点と欠点を相互に補完した全く新しいタイプの計算技法である. 本研究で行う波・流れと人工筋肉の強連成シミュレーションは, 既存の商用コードでは解析不可能であるため, 前述のような新たな計算技法の開発が必要となった.
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