2008 Fiscal Year Annual Research Report
沿岸域で直接測定した乱流特性量による懸濁物の凝集・崩壊現象のパラメタリゼーション
Project/Area Number |
20760333
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
齋田 倫範 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 学術研究員 (80432863)
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Keywords | 有明海 / 懸濁物質輸送 / フロキュレーション / 乱流微細構造 / 乱流エネルギー散逸率 / フロック径 / 沈降速度 / 潮流 |
Research Abstract |
わが国の沿岸域における水環境悪化の一因として, 浮遊懸濁物に関連した水環境の変化が挙げられる. これらの問題を解決するために, 沿岸域の懸濁物質輸送現象をより高精度に評価可能な数値モデルを確立する必要がある. そこで, 本研究では凝集やフロックの崩壊を乱流エネルギー散逸率で表現するWinterwerp(2002)の懸濁物輸送モデルを有明海に適用することを目的として, 乱流エネルギー散逸率と懸濁物質(SS)の動態の関係を評価するための現地観測を実施した. 観測は2008年12月3日に有明海竹崎島沖において一潮汐間にわたって行った. フロック径の測定にはアレック電子社製の水中顕微鏡を用い, 海底から1m, 4m, 8mの位置において60分毎に測定を行った. エネルギー散逸率はアレック電子社製の微細構造プロファイラを用いて観測時間中に300回計測した. さらに, 多項目水質計による60分毎の塩分, 水温, 濁度の測定, ならびに採水によるSS測定と採泥も併せて実施した. 観測結果より, SS濃度は3.0〜11.0mg/lの間で変動していることが確認された. エネルギー散逸率は全ての層で上げ潮時, 下げ潮時に大きな値を示し, 憩流時には比較的小さな値を示した. また, 海底から1mの層では一潮汐間にわたって他の層に比べ, 1オーダー程度大きな値を示した. 水中顕微鏡によって実測されたフロック径は20μm前後であり, 一潮汐間にわたってフロック径に大きな変化は見られなかった. また, モデルによる推定値と観測値とを比較すると, 海底面上4mと8mではフロック径の変化がモデルにより概ね再現できた. しかし, 海底に近いほど観測結果との差異が見られた. これは本研究で用いたモデル式では海底から巻き上げられた直後のフロックの影響が考慮されていないためと推察される.
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