Research Abstract |
本研究では,自動車保有・利用行動を構成する購入段階,走行段階,保有段階の3つの段階に着目し,これらの行動を捕捉するのに適した調査手法の提案を行うとともに,集団意思決定理論に基づくソーシャルネットワークの影響を考慮した車種選択モデル,およびコピュラ関数を用いた走行段階と保有段階の同時決定モデルをそれぞれ開発したうえで,3段階の行動を総合的に分析できる統合型モデルの開発を行った.統合型モデルの開発にあたっては,世帯行動の多様性が考慮できるようにモデルフレームを設計した.観測データには異なる自動車保有・利用特性を持つ世帯が混じり合っているので,潜在クラス手法を用いて,同質なクラスに内生的に分類したうえで,クラス別の自動車保有・利用特性を明らかにした.その結果,世帯行動の多様性は,世帯のライフサイクルステージや自宅から生活関連施設までの距離などの地域特性と密接に関係することが明らかとなった.すなわち「若年世帯」と「中高年世帯」,「都市部居住世帯」と「郊外居住世帯」では,車種選択行動における世帯の意思決定ルール,保有期間と年間走行距離のそれぞれの分布特性,および保有期間と年間走行距離の相互依存性が,大きく異なる.これは,自動車保有・利用行動の予測に関して,今後さらに進行すると予想されている少子高齢社会を,世帯のライフサイクルステージの変化や居住地選択と関連付けた政策判断が必要なことを意味する.将来のライフサイクルステージの変化を与件とすれば,本研究の提案手法によって,自動車保有・利用特性の変化と,自動車関連政策の実施に対する多様な世帯の反応が分析可能であり,有効な政策評価を行うことができる.
|