2010 Fiscal Year Annual Research Report
長寿命建築物のための大型RC柱の自然暴露試験と耐久・耐震性能に関する研究
Project/Area Number |
20760378
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
中田 幸造 琉球大学, 工学部, 助教 (80347129)
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Keywords | 大型RC柱 / 自然暴露 / 塩害 / 耐久性能 / 耐震性能 / フライアッシュ / 長寿命 / せん断強度 |
Research Abstract |
沖縄は高温・多湿の厳しい腐食環境下にあり,かつ島襖環境という地理的条件のため,RC建物が塩害を受けやすい。加えて,塩分総量規制以前の海砂を大量に使用したRC建物も数多く存在する。本研究では3種類のコンクリート調合を用いて,かぶり厚さ30mmを有する大型RC柱(40cm角の正方形断面)の自然暴露試験を行い,塩害損傷が耐久性能と耐震性能に与える影響を照査することを目的とする。 5年間暴露したモニター試験体の含有塩化物イオン量の調査の結果,フライアッシュを混入したFシリーズでは含有塩化物イオン量はNとLシリーズより少なく,かつ3シリーズとも暴露期間が3年より5年の方が含有塩化物イオン量がわずかに増加した。腐食鉄筋の質量減少率は,NとLシリーズの主筋と帯筋,及びFシリーズの帯筋では暴露期間の増加に伴い質量減少率が増加する傾向にあった。一方でFシリーズの主筋の質量減少率には変化が少なかった。 自然暴露大型RC柱の水平加力実験の結果,5年暴露のLシリーズでは最大水平耐力は曲げ強度計算値に到達し,その後,負側部材角の5%加力時に軸ひずみが大きく進行したため,加力を終了した。5年暴露のLシリーズの最大水平耐力は曲げ強度計算値に到達した。5年暴露のLシリーズは最大水平耐力が曲げ強度計算値に到達し,その後,正側部材角5%の加力途中に柱頭の帯筋が3本破断すると共にせん断破壊を起こした。試験体のエネルギー吸収量は暴露期間が進行するにつれ基準RC柱試験体よりやや大きくなった。以上より,海岸での暴露によりコンクリート表面にひび割れが生じ,鉄筋が激しく腐食しているRC柱であっても本実験での暴露期間程度であればRC柱の耐震性能(最大耐力と靭性)に及ぼす影響は少なく,耐久性能の低下の方が大きいと分かった。なお,2010年6月の外観調査時点でRC柱試験体の腐食はかなり進行しているように観察されたため,同年9月27日に再度外観調査を行い,急遽11月中旬から下旬に水平加力実験とモニター試験体の塩分浸透量調査,鉄筋の力学性能調査を行った。平成23年度はこれまでに得られた全データを用いて塩害損傷がRC柱の耐久性と耐震性能に与える影響を検証する。
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