Research Abstract |
本研究では,住宅における熱損失係数の現場測定法の考え方を拡張して,居室における調湿性能を現場測定により把握する方法を考案し,また,居室における調湿性能を表す新たな数値指標を提案することを目的として,人工気候室内におけるチャンバー実験及び実在するアパート居室における現場実測を実施した。 人工気候室内におけるチャンバー実験では,現場測定における潜熱発生の方法や室内湿度の測定方法,換気量を同時に測定する方法などについて検討することを目的とし,実験ケースとして,(1)室内容物の存在しない状態,(2)室内容物として吸放湿材が存在する状態について実験を行った。また,室内の吸放湿が存在しない状態での室内湿度変動を数値シミュレーションで算出し,室内容物が存在する状態での室内湿度の実験結果との差から調湿性能を評価する指標を提案し,実験結果から評価指標を算出して評価を行った。その結果,吸放湿体の無い条件の結果から吸放湿量の実験誤差の大きさを確認することができ,それらを用いて実験値を補正することにより,吸放湿量を精度良く算出出来ることがわかった。 実在するアパート居室における現場実測では,チャンバー実験における実験方法及び評価方法に基づいて実大スケールでの検証を行うことを目的とし,実験ケースとして,(1)室内容物が存在しない状態,(2)代表的な室内容物として,書籍,布団,衣類,木製家具を設置した状態について実験を行った。その結果,室内容物の有無による調湿性能の差は明確に把握することは出来なかったが,この原因としては,実験で設定した室内容物が少なかったことや屋外の温湿度の影響を大きく受け,人工気候室内におけるチャンバー実験のように潜熱励振による明確な湿度応答を捉えることが困難であったことなどが考えられた。
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