2011 Fiscal Year Annual Research Report
再整備された沖縄の御嶽の改変パターンの類型化と空間理念の研究
Project/Area Number |
20760415
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小野 尋子 琉球大学, 工学部, 助教 (20363658)
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Keywords | 沖縄 / 御嶽 / 基地接収 / 集落地理 |
Research Abstract |
本研究は、本来神聖な不可侵のものとしてあった沖縄の民俗空間の「御嶽」とは、地域の人々にとってどういうものであったのか、またどのように戦後継承されたのかを、集落が基地に接収され、その結果移転や移設、再建を余儀なくされた集落の設計協議過程の議論や実現された形から検証することを目的として行われた。 本年度は、実際に移設・再建された「御嶽」の空間構成要素を実測に基づき計測を行なった。その結果、一見、集落を超える共通事項が確認された。移設再建を経験した御嶽では、御嶽の拝む場所が敷地内で(一部の御嶽では敷地外も含む周囲の地形中)一番高いところに設置されていること、そして、正面が南方に向くように(例外的に基地内にある旧集落方向を望む形に)設計されているということである。設計者への当時の集落の建設委員会との設計協議でのやりとりについてヒアリングした中でも、「宗家の方から設計への条件として出てきたのは、香炉の格付けと向き」という回答が聞かれ、これらが重要な空間要素として継承されたことがわかる。 しかし、その一方で、御嶽と一体となってそれらを取り囲む樹林地に対する意見はどの集落でも集落側からの意見としては聞かれなかった。むしろ、戦後の生活の変化の中で御嶽の禁忌性が失われ、周囲の敷地に対して高所にあり死角となりやすい御嶽内で中高生がタバコを吸うなどの悪さをすることが課題となり、見通しをよくするためにという目的で大きく伐採されるような事例が散見された。唯一、なるべく周囲の樹林を伐採せずに、戦前のままの形を保とうと設計されたのは、県外の建築家、原広司が設計に関与した場所だけであった。 沖縄の御嶽を中心とする民俗空間は、自然拝みと先祖崇拝が渾然一体となった非常に特徴的な慣習であったが、都市部にある移転集落では、拝みや禁忌性を介した自然との精神的な関わりは変質してしまったと言える。
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Research Products
(2 results)