2008 Fiscal Year Annual Research Report
近代期朝鮮半島における名所型住宅地、別荘地の開発実態とその生活
Project/Area Number |
20760432
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Research Institution | Hiroshima International University |
Principal Investigator |
砂本 文彦 Hiroshima International University, 工学部, 准教授 (70299379)
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Keywords | 朝鮮半島 / 郊外住宅地 / 京城 / ソウル / 明水台 / 1930年代 |
Research Abstract |
朝鮮半島における「植民地下の余暇性を伴う住空間の形成」を、名所型住宅地、別荘地の開発実態とその生活像から調査研究し、韓国と日本の近代建築史・都市史の新しい一面を示す。平成20年度はソウル特別市にて現地調査、文献調査を中心に実施し、研究発表と論文掲載を行った。当時の京城府の郊外住宅地の形成については平成19年度の予備調査で終了していたため、平成20年度は1930年代に漢江南で木下榮により行われた明水台住宅地開発について調査した。この事例を選択した理由は、これまでの植民地下の郊外住宅地形成の常識を覆す典型と考えたためで、次のような特性を把握した。 1. 漢江の風景を取り込みつつも、主な居住者として想定した日本人が好む、日本的風景を見立てた名所形成を意識した郊外住宅地形成を目指した。 2. 開発の中期には朝鮮人向けの学校誘致を積極的に行って、朝鮮人学童の下宿も建つ学園都市形成を目指した。 3. 日中戦争後は、富裕層ばかりではなく、貧困層も居住し、日本人、朝鮮人の雑居となり、居住者は朝鮮人が大半を占め、町会運営では日本人が半数余りだった。 明水台住宅地の開発とその居住者の生活は、たえず京城の都市拡大の諸要因から他律的に規定されており、これまでよくいわれてきた「郊外住宅地」=「日本人富裕層の住宅地」=「別世界」のごとく、単純な図式は成立し得ないことを実証的に示した。特に、この研究成果を韓国の研究機関を通じて現地で発表できたことは特筆に値する。
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