2009 Fiscal Year Annual Research Report
近世建造物の年代測定を目指した日本産ツガ属の年輪年代学的研究
Project/Area Number |
20760437
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Research Institution | National Research Institute Cultural Properties, Nara |
Principal Investigator |
藤井 裕之 National Research Institute Cultural Properties, Nara, 埋蔵文化財センター, 客員研究員 (30466304)
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Keywords | 建築史・意匠 / 年代測定 / 年輪年代法 / 近世建造物 / ツガ / 文化財 |
Research Abstract |
本研究の主な目的は、これまで年輔年代法の対象とされていなかったツガ属の木材について、新たに暦年標準パターン(年輪幅の変動変化に関する基準資料)を作成することにある。したがって本年度も引き続き、この目的に適した現生、古材試料を収集し、その年輪データを計測、検討することが活動の中心となった。 古材については、願泉寺(大阪府貝塚市)でツガ材の年輪幅の計測を継続した。前年度の研究で、當麻寺大師堂(奈良県葛城市)と願泉寺本堂という、建築の経緯が異なる物件でもツガ材の年輪パターンが同調することがわかっていたが、この二者にさらに願泉寺築地塀の材を加えて比較したところ、やはり同様の結果が得られた。また、築地塀の材には樹皮型の試料が含まれており、前年度の研究で間接的に年代づけされた當麻寺材を基準に年代を求めたところ、築地塀建設を伝える文字資料の内容と整合的であった。 一方、現生木については当初の予定を変更し、鹿児島県屋久島で集中的に試料収集にあたった。その結果、屋久杉自然館の床材を主とした試料群をもとに、これまでに408年分の基準パターン(1581~1988年)を得た(年度末現在)。また、これと和歌山県高野山産現生材のデータを比較したところ、互いの最外年輪年代を正しく検出できるなど、一定の同調性が認められた。 本研究による検討結果を総合すると、これまでに得た年代値と歴史的エピソードの間に矛盾はなく、年輪パターン自体も各都道府県の領域より広い地理的範囲で同調していることがうかがえる。以上のことからすると、ツガ材に関しても、ヒノキやスギと同様の水準で年輪年代法が適用可能なことが確認できる。暦年標準パターンの実用化は依然将来の課題として残されるが、本研究による屋久島産現生材の成果は、今後の暦年標準パターン設定に際して、西日本方面における先進導坑としての役割を果たすものと評価できる。
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